日本の店舗ビジネスは厳しい状況にあり、飲食店や美容室の3年以内の廃業率は約7割、10年以内では9割以上に達すると言われています。多くの店主は売上減少の原因を不況や原材料の高騰、悪天候などの外部要因に求めるものの、マーケティング業界の統計によれば顧客が店を離れる理由の約68%は「お店への無関心」、つまり心理的な要因が最大の原因であり、不満による離脱は14%に過ぎません。店側の「雨が降ったから売れない」といった認識と実態のギャップが大きな盲点となっています。

2025年12月19日に発売される書籍『お店の磁力のつくり方』(著者:岡城良太)は、こうした無意識の離反を防ぎ、顧客を磁石のように引き寄せる「磁力」の作り方を体系的にまとめています。著者の岡城氏は沖縄の小さな美容室経営から始まり、現在はグループ累計売上50億円を誇る事業展開をしています。前著『感情の可視化』では目に見えない感情を数値化する手法を提示し注目を集めましたが、本書ではその手法を店舗経営に応用し、「言語化」「最適化」「最大化」のステップを通じて感情のメンテナンスを可能にする新しい経営メソッドを提案しています。
本書の内容には、儲からない店の共通点「盲点」を見極める思考法や、顧客の表面的ニーズの裏にある「特別視されたい」「安心したい」など4つの感情キャラクターをとらえる技術、数字と感情を切り分けて週一の振り返りで経営課題を明確にする仕組みなどが紹介されています。著者の岡城氏は、体調不良を隠し続けた父を若くして失った経験から、店舗経営も数字や感情の現実から目を背けると寿命が縮まるとして、同じ悩みを抱える店長たちへの指針として本書を執筆しました。
書籍は日本実業出版社より1,870円(税込)で発売予定で、Amazonページも開設されています。発行元の株式会社CHIMJUNは沖縄県那覇市に拠点を置き、ライフスタイルブランド運営や店舗経営コンサルティング、人材育成セミナーを展開しています。
店舗経営において顧客の心理的な関心の薄れが最大の離脱原因であるという指摘は、多くの事業者にとって目を開かされる内容です。経営者が外的要因のせいにせず、自らの店の認識のズレと向き合う必要性が強調されているのは、持続可能な店舗運営のために非常に重要でしょう。また、客の感情を数値化し具体的に経営に生かすというアプローチは、感覚だけに依存しがちな従来の手法とは一線を画しています。これからの経営者が直面する課題に対し、実践的で再現性のあるメソッドを示す一冊として期待できそうです。