今年、第62回文藝賞を受賞し、2025年11月17日に河出書房新社から刊行された坂本湾のデビュー作『BOXBOXBOXBOX』が、第174回芥川龍之介賞の候補作に選出されました。芥川賞・直木賞の選考会は2026年1月14日に開催され、受賞作が決定します。

『BOXBOXBOXBOX』は、薄霧が立ちこめる宅配所で働く作業員たちの物語を描いたベルトコンベア・サスペンスです。主人公の男性・安は一日中無数の荷物を仕分け、箱の中身を妄想しながら単調な労働を乗り越えますが、やがて許されざる箱の中身を覗くことに成功。次第に現実と妄想の境目が揺らぐ中、消えていく箱の謎に迫ります。

本作は選考委員の小川哲、角田光代、村田沙耶香らからも称賛を受け、単行本発売から2週間で重版が決定する話題作となっています。2025年の新人作家によるデビュー小説の中でも高い評価を集めており、全国の書店員からも熱い支持の声が寄せられています。

著者の坂本湾は1999年生まれで26歳。沖縄・宮古島出身で、福岡県や北海道で育ちました。『BOXBOXBOXBOX』は彼の文藝賞受賞作であり、装丁は川名潤、装画は杉野ギーノスが担当しています。書籍は46判の上製で120ページ、税込1,650円で販売中で、電子書籍も発売されています。
芥川賞ノミネートを記念し、本作の冒頭約20ページが河出書房新社のWebサイトで無料公開中です。時代の閉塞感や新時代の労働の問題を取り上げた本作は、虚実の境目を揺らす独特の世界観と共に、労働における自己の存在を問いかける一冊となっています。
過酷で単調な労働現場を舞台に、そこに漂う閉塞感や労働者の心情を独自の物語性で描き出す点が印象的です。読者は箱の中身の謎を追いながら、同時に現代社会における労働の実態や人間の精神を深く考えさせられるでしょう。デビュー作ながら既に高い評価と注目を集めており、今後の作品への期待も自然と高まります。また、約20ページを無料で体験できることは挑戦的な内容に触れる良い機会となりそうです。